★庭は“静かなカレンダー”★

庭に一歩出ると、季節はいつも“声を出さずに”教えてくれます。

たとえば11月。
カレンダーを見ればただの数字の並びですが、
庭では葉の色がひとつ変わり、
日差しの角度が少し低くなり、
影が長く伸びて、
「あ、冬が近いな」と気づかせてくれます。

植物たちは時計を持っていないのに、
時間にとても正直です。
寒くなれば成長をゆるめ、
風が強い日は葉を揺らして軽く身づくろい。
冬の前には、しっかり根を張る準備を始めます。

庭を見ていると、
“毎日ほんの少しずつ変わる”ということの大切さを
よく感じます。
昨日と変わらないように見えて、
実はちゃんと季節は進んでいて、
植物はその変化を見逃さずに受け止めている。

派手なイベントも、特別なアクションもなく、
ただ静かに時間を刻んでいるだけなのに、
気がつけば景色が変わっている——
そんなところが、庭の面白さでもあります。

私たちの仕事は、
その“静かなカレンダー”と一緒に歩くことでもあります。
現場へ向かう朝の空気、
日が落ちる速さ、
土の乾き方……
季節の変化が、仕事の段取りにもヒントをくれます。

忙しくて季節を感じる余裕がないときほど、
ほんの数秒でも庭を見ると、
今の季節のページがどこにあるか
そっと教えてくれるような気がします。

みなさんのお庭も、きっとどこかで
“季節のしおり”がひらかれているはず。
ふとした瞬間に外を眺めてみてくださいね。
静かに、でも確かに季節が進んでいます。